法人減税と消費税率Upにセットで反対する理由
Update: 2010-06-28
法人減税と消費税率Upについて、それをセットで反対だし、それがセットにされることも反対だし、個別にも反対だという理由を列挙してみました。この記事を書くにあたり Twitter でフォローさせていただいているみなさんのつぶやきを参考にさせていただきました。みなさん、ありがとwww ^^)/"
選挙期間中の更新なので、政党の評価などは記していません。
1. 消費税率Upで確実に消費を冷え込ませる
消費税が現在の税率 5% になったのは橋本内閣のときですが、景気後退の一つの要因になったと言われています。消費者の収入が税率変更の分だけ上昇しない限り、また、貯蓄率の低下などの副次的な要因が無い限り、単純に消費が減ります。これにより、もともと弱い日本の内需がますます寒いことになります。日本の国民の貯蓄率はひたすら下がり続けていますから、とてもとても余裕がある状態ではありません。
それでも財界などが消費税率Upを認める理由は、後述のように、企業の税負担軽減がセットになっていることや、輸出産業があまり損をしないことがあると思われます。さらに言うと自動車、電機などの輸出産業の大手が財界の政治部である経団連の幹部を輩出しています。
2. 逆累進が低所得者を直撃する
所得の低い世帯ほど、収入がそのまま消費になる率が高いです。その辺のことは、過去記事 みんなの党は消費税率引き上げには反対なの? に書きましたのでご参照を。
消費税率Upまたはその検討を主張されている政党・政治家さんは、生活必需品のことなどを考えるようなことも併せていわれている場合が多いです。しかし、具体的にどうするのか、さらに、その効果がどのようになるのかまで述べた例は、主要政党の参議院選挙政策では皆無です。
3. 他国の税制との単純な比較がウソっぽい
企業には、税より重い社会保障負担というものがあることは、過去記事 企業には税より社会保障負担の方が重荷なのでは? に書きました。これを抜きに法人税についてだけ他国と比較して高い低いと議論するのは、まあ、知らない人はともかく企業経営についてよく知っている人がそのようなことを言うのは、ほとんど詐欺行為です。
また、退職引当金など様々な企業の内部留保を認める控除の措置によって、実質的な税負担が低くなります。これがこの20年程の間に充実してきました。で、結局日本の企業の実質的な税負担はどうなっているのかについて、例えばこんな記事 小笠原誠治 法人税減税論議
<租税負担率 対国民所得比> 2007年度(或いは2007年)
日本 :24.6%
米国 :26.4%
ドイツ :30.4%
フランス :37.0%
英国 :37.8%
私は FX とかやらないので知らない人です。たまたまネットで検索してこの記事を見つけました。法人税値下げの理由について、国際競争力に言及する人がたくさんいらっしゃるようなのですが、競争力ということであれば法人所得税や上記の社会保障負担だけでなく、この記事にあるように租税負担全体比較対象とするのが合理的かもしれません。
その他、個別に有名企業の名を上げて、実質的な税負担がどれだけだというような話がネット上にいろいろ出ています。
Wikipedia 日本語版「消費税」にこんな一覧が出ています。
国税収入に占める消費税の国際比較
国名 - 消費税率 - 国税に占める割合
日本 - 5% - 24.6%
イギリス - 7.5% - 23.7%
イタリア - 20.0% - 27.5%
ドイツ - 19.0% - 33.7%
フランス - 19.6% - 47.1%
アメリカ - 0% - 0%
数値は宮内豊編の図説 日本の税制〈平成18年度版〉より引用。
他の税収との関係の他、生活必需品への課税など低所得者への考慮などが、意外に高い日本の消費税率依存の要因となっています。これで単純に10%にしたら一気にイギリス、イタリア、ドイツあたりをゴボウ抜きということになりそうです。
4. 消費税が企業の税負担の穴埋めになる
22年前につくられた消費税納税総額が224兆円で、この期間法人3税減税額が208兆円だったという事をどう考えるのか... Twitter agencyboss さんのつぶやきより。
政府や民主党が言うに、法人税を25%まで下げたいという。この為に必要な財源は約9兆円程度。この額を消費税で換算すると約4%分に相当する。消費税10%ねぇ、まぁそういう事なんだろうな... Twitter gaitifujiyama さんのつぶやきより。
5. 税負担を転嫁できない中小企業の負担を増やす
消費税率Upの価格への転嫁ができるかどうかは、その企業の市場での強さに大きく左右されます。あらゆる物に課税され逃げ場のないところで押しつけあいすることになりますが、そこで、力の差が出てしまいます。
で、「逃げ場がない」と書きましたが、これは国内市場に限ったはなしです。そうでもないということについては次項を。
6. 輸出産業減税になり得る
いや、まあ、減税する余裕があるのならしてもいいんですが。。。
輸出したものについては、当然のことながら消費税はかかりません。これは、ただ単に払わなくていいというだけのことではありません。手続きの詳しいことはおいといて、要するに、原材料の購入にかかった消費税が戻ってきます。いや、まあ、その分下請け企業に還元してくれるっていうのなら許そうかなという気にも少しなるのですが、自動車や電機など、下請けの構造が何段にもなっているところで末端までうまく還元できるなんてこと、あるわけないし。
7. 派遣労働者をモノ扱いして得する消費税
私のようにIT業界で客先常駐の仕事をしている者にとっては日常のことなのですが、自社の要員を使う場合とそうでない場合とでは、人件費の計上の仕方が全く異なります。派遣法に基づく派遣や請負契約などによって手当てした要員に払う費用には消費税がかかります。と、書くと、損してるように見えるかもしれませんが、そうとも限りません。その会社が消費税を払う際にそこから差し引き控除できます。その辺、企業の会計はよくできています。さらに、それが、輸出品の生産に関わる費用であれば。。。
8. なんか米国がからんでるみたいなんですけど
産経新聞 6月25日13時26分配信 消費税増税論議「国民も理解」 野田財務相、米駐日大使に説明 だそうで。あと、元の記事はもう無くなっていますが、毎日.jp 5月20日 IMF声明:「日本、消費税引き上げを」財政健全化求める というのもありました。いつものことですが、外圧が来ています。IMFって、カネ借りてる国でなくても、けっこう具体的にああしろこうしろって口出すんですね。
補足A: 防衛費でお大尽?
東京新聞 2010年6月26日 朝刊 次期戦闘機の予算計上へ 来年度防衛費、数機分
次期戦闘機(FX)の選定作業を進めている防衛省は、来年度の防衛費にFX数機の購入費を盛り込む方向で最終調整に入った。総額一兆円近い「巨大航空商戦」の入り口となる機種選定には、米政府の意向や防衛産業の思惑が複雑に絡む。菅政権にとって「第二の普天間問題」ともいえる難問となりそうだ。 候補機種は当初の六機種から、米国のF35(ロッキード・マーチン社)、FA18E/F(ボーイング社)、欧州共同開発のユーロファイター(BAEシステムズ)の三機種に絞り込まれた。 ... どの機種を選んでも、世界一高価とされた準国産のF2戦闘機(約百二十億円)を上回る一機百五十億円前後の超高額機となる見通し。数年かけて二個飛行隊分(約五十機)を導入する。年末の予算案決定までに機種が決まらない場合、予算枠だけ確保して機種決定を先送りする手法も検討されている。 ...
とにかく予算枠は確保すると。あいかわらず財政の聖域ですなぁ。