みちのぶのねぐら

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6次7次の多重請負が支える日本の安全

Update: 2011-10-29

組合 の支部のニュースに載せる記事ができたので、自分のブログにも転載します。文中の「みなさん」は派遣や下請けの契約社員としてITのお仕事をしている、組合の支部のみなさんです。


2011年8月4日に日弁連が震災・原発問題連続シンポジウムを開催しました。原発の多重請負は6次、7次に及び、元請が出した10万円の日当が、本人の手に届くまでに8千円になることもあるといった内容が報道されています。元請は私たちの仕事の発注元と同じ企業かもしれません。

ところで、原子力産業が下請に支えられていること自体は、ずいぶん前から知られていました。1979年に出版され、最近復刊した『原発ジプシー』(堀江邦夫)には、著者が半年ほどの間、原発の下請の労働者として働いた体験が綴られています。――腐臭の充満する排水管で貝を削ぎ落とす/金属の粉じんが視界を遮る装置内に入って家庭用掃除機で掃除/石綿の保温材をハンマーで破砕/下請会社の連鎖倒産/骨折の治療は労災にせず会社が全額負担/安全教育は受講したことになっていて――著者の場合ひ孫請あたりですが、さらにその下の会社もあります。著者は、自分より安い日当で働くその会社の人を不思議に思いますが、仁義に反するから間抜きはNG……このあたりの事情は、みなさんには説明不要ですね。

さて、土建・製造などの現場の人たちと私たちとでは、安全衛生の重要性がずいぶん違います。私たちの場合、仕事中のけがはめったないし、VDT作業によるテクノストレスは、石綿や放射線の被曝の深刻さとは比べものになりません。そのため、契約完了後に私たちがどこかに行ってしまっても、元請や行政はあまり困りません。福島第一原発はどうかというと、3月11日以降に作業された人の一部の行方がつかめず、検査等々ができないという報道がありました。他の原発も次々に検査に入っていますから、そちらに行かれたのかもしれません。被曝の累積で原発の仕事ができなくなり、他の仕事を探しに行かれたのかもしれません。

このような下請の労働者のことは、国内よりも海外で詳しく報じられています。例えば英語に設定したGoogleで “fukushima daiichi subcontractor” で検索すると、6番目はニューヨーク・タイムズの記事 “Japanese Workers Braved Radiation for a Temp Job” (2011年4月9日、ヒロコ・タブチ記者)です。「数千人の訓練も受けていない有期雇用の労働者の一人」のイシザワさんの場合、上司は津波で帰らぬ人となり、資格のない彼一人では敷地内に入って仕事をすることができませんでした。約8万3000人の日本の原発の労働者のうちの88%が下請だとのことです。

このような記事が、短期間のうちに、海外の有名な報道機関のWebサイトに続々と掲載されました。これが、今、私が少々本気で英語の勉強している理由です。

ドイツのテレビ局も下請労働者に直接の取材をしています。どなたかが日本語字幕をつけて [“ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」”(http://www.youtube.com/watch?v=aAE-QBmC1VA) というタイトルでYouTubeにアップロードしています。ZDF(第2ドイツテレビ)は主に受信料で運営している公共の全国放送です。顔を隠して取材に応じた作業服の人は、「この地方にもう仕事はありません、それで東電の仕事をしています」(字幕より)とのことです。事故が失業を生み、その失業が、100年以上続いたこの社会の法則に従い安価な労働力を生みます。しかし東電は「下請会社が作業員と結んでいる契約の内容は知りません」(字幕より)……このあたりの事情も、みなさんには説明不要ですね。