dragon image みちのぶのねぐら

小沢一郎の市場開放&食料の完全自給

Update: 2011-05-05

小沢一郎氏が昔から市場開放を主張してたことは「日本改造計画」読んで知ってるつもりだったのですが、あらためて著書など読み直してびっくりしたという話です。

小沢一郎氏が重要な政策を語る場合には、その元になる情勢認識がついてきます。「日本改造計画」 ( 1993 ) の場合、EC統合や北米自由貿易圏 ( NAFTA ) のような地域的な貿易体制により世界の自由貿易体制が脅かされていて、これまで GATT の枠組みで自由貿易体制の恩恵を受けてきた日本にとってゆゆしき事態だということだそうです。その立場から、マレーシアのマハティール首相が提唱する東アジア経済協議体 ( EAEC ) なんてのは、世界の三極化につながるからダメってことになります。で、その NAFTA に参加する米国が日本に市場開放を求めています。その理由は、経常収支で日本が大幅な黒字、米国やドイツは大赤字、フランスがかろうじて黒字だけど日本が一人勝ち状態だからということなのですが。。。

経常収支?貿易収支じゃなくて?

たたいたりけとばしたりできる「もの」の貿易の話だけではないようです。後に続く文章でも、金融自由化や外国企業の新規参入のことが出てきます。で、その NAFTA に加盟している米国がこれをなんとかしろと日本に迫って譲歩を引き出しました。その一つが「輸出自主規制措置」なのだそうですが、この、どこがどう「自由貿易」なのか誰かわかりやすく私に説明してくれないかな。

ちなみに経常収支の現状はこんな感じであいかわらずです。

時事通信:【図解・経済】経常収支の推移 https://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_bop-balance

貿易もずっと日本が黒字

日米と主要国の貿易額

市場開放(たぶん、私が理解するところの「自由貿易」の意味ではない)によって国内の構造改革を、という話は、今でもたくさんの人が言っているから詳細はパス。「ダンゴウ」とかは、小沢氏の力をもってしても内政の範囲内ではどうにかできるものではないらしいです。

農業との関係については、この著書にはまとまった記述はありません。

その後、10年以上経った 2006年、小沢一郎氏はいろいろな形で政策を発表しています。

民主党代表選挙出馬にあったっての「私の基本政策」 https://www.dpj.or.jp/news/files/060912rinen.pdf では、自由貿易は安全保障の課題とされています。

V、平和を自ら創造する 1. 真の日米同盟の確立 ...略... 真の日米同盟の確立 「真の日米同盟の確立を促進するために、米国と自由貿易協定(FTA)を早期に締結し、あらゆる分野で自由化を推進する。」

  1. 貿易・投資の自由化を主導 世界貿易機関(WTO)において貿易・投資の自由化に関する協議を促すと同時に、アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との自由貿易協定(FTA)締結を積極的に推進する。それに向け、農業政策を根本的に見直すことで、わが国が通商分野で国際的に主導権を発揮する環境を整える。

この課題を「安全保障」に入れているのは、日米同盟が軍事だけではなく経済等々を含む広範な分野の同盟だという認識があるからでしょう。で、それにもかかわらず、日本の農業は守るとしています。

III、まず食料から国民の安全と安心を確保する 1. 食の安全の確保 ...略... 2. 食料の完全自給を目指す 外国からの輸入に頼らず、国民が健康に生活していくのに必要な最低限のカロリーは、国内ですべて生産する食料自給体制を確立する。 3. 小規模生産でも生活できる農山漁村の確立 ...略... 4. 個別(戸別)所得補償制度の創設 世界貿易機関(WTO)における貿易自由化協議と、各国との自由貿易協定(FTA)締結を促進する一方、農産物の国内生産を維持、拡大する。そのために、基幹農産物については、わが国の生産農家の生産費と市場価格との差額を各農家に支払う「個別(戸別)所得補償制度」を創設する。

2006年11月の「政権政策」 https://www.dpj.or.jp/news/files/tatakidai061128.pdf でも同じようなことをうたっているのですが、え〜っと、完全自給? 他の政党の政策で「自給率 50% に」とかなら見たことあるのですが。「最低限のカロリー」って書いてあるから米だけの話ではないようです。本気でしょうか? 同じ頃に出版された「小沢主義」を読んだ感じでは、どうも本気のような気がしないのです。

自由経済・市場開放の観点から、相手が本当に自由な貿易を望むなら農産物の輸入も自由化すべきだということを、かねてから僕は堂々と主張してきた。貿易の自由化によって得られる我が国のメリットは、それによってこうむるデメリットをはるかに上回るものだからである。 先に書いたように、あまり相手が望んでいるような気はしないのですが、それはおいといて、 ...略... 経済的に豊かになった日本の消費者の舌が肥えていて、また食の安全に対する意識も高いからに他ならない。

日本の農産物はたしかに世界的に見れば価格は高いかもしれないが、それだけ高品質だし、安全だということであって、価格の高さは決してマイナス材料だけではない。最近では中国・東南アジアなどでも日本産の野菜・果物などが高所得層に買われるようになっているそうで、日本の農業に国際競争力がないというのは、必ずしも的を射たものではない。

カロリーベースの自給率につながるような話じゃないよなぁ。っていうか WTO には「ミニマム・アクセス」というものがあるでしょう。必ずしも米で輸入量のノルマをこなさなくてもいいようですが ( 赤旗:WTOのミニマムアクセスの「大分類」とは? など参照 ) 。また、当然、その分輸出するというのも論理的には有り得ますが、すみません、カロリーベースの自給率について もうちょっと詳しく説明していただかないと、私、理解できません。