各党の原子力政策:2010年の選挙政策から
Update: 2011-03-17
各政党の昨年2010年の参院選に向けた政策から原子力に関する記述を抜き出してみました。原子力そのものについての言及がない政党は、関連しそうな文章を引用しました。
民主党 Manifwsto 2010
強い経済
総理、閣僚のトップセールスによるインフラ輸出政府のリーダーシップの下で官民一体となって、高速鉄道、原発、上下水道の敷設・運営・海水淡水化などの水インフラシステムを国際的に展開。国際協力銀行、貿易保険、ODAなどの戦略的な活用やファンド創設などを検討します。
自民党 政策集 J -ファイル2010
19 原子力等国家プロジェクト体制の構築
原子力発電等の先端的環境エネルギー技術や新幹線等の鉄道技術、上下水道で用いられている膜技術、漏水対策や再生水利用技術、電気・ガスなどのライフライン・システム等、わが国の優れたインフラ関連産業やサービス産業、コンテンツ産業の国際展開を強力に支援し、受注競争での“競り負け”を防ぎます。そのため、日本政策投資銀行の国際部門である国際協力銀行(JBIC)が、地球環境保全に加え、資源・エネルギー確保や国際競争力確保等の機能をより発揮できるよう、政策金融機能の強化を図ります。先進国・途上国を問わず技術・ノウハウ・製品が統合されるパッケージとしての国際展開を積極的に支援します。
150 「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」の拡充・延長
安全・安心を大前提とし、原発立地地域の住民からも信頼されるよう運用に万全を期します。同時に、地域振興という観点から「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」の改正を行い、10年間延長させるとともに、特例措置の対象範囲拡大や対象事業の国の負担割合の引き上げなど、施策の充実を図ります。
161 原子力政策の推進
地球温暖化問題の解決には、地球温暖化ガスを発生させない原子力発電所の活用は不可欠であり、その政策を強力に推進し、わが国のエネルギーセキュリティ(安全保障)、需要及び環境問題に応えるため、その増設も含め、体制を整備します。
一方、今後のエネルギー需給とわが国原子力技術の国際展開を強力に進めるため、設備利用率の改善等による発電量に占める原子力の比率の向上に向け、整備点検や国の安全審査体制のあり方を再検討し、国際的にも信頼される原子力政策を推進します。また、プルサーマル計画を更に推進するとともに、核燃料サイクルや高レベル放射性廃棄物等の処分に関わる体制を整備するため、国民の理解を得る努力を続けます。
238 イノベーションの実現に向けた制度改革
研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革やベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
わが国が優れた技術を持つ水システムや原子力等の基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。
公明党 manifesto 2010 参院選重点政策
- 政府が先頭に立ち、システムとしてのインフラ輸出を促進します(原子力発電、新幹線、上水道システム等)。
- 通商政策を抜本的に強化し、新幹線や原子力発電などわが国が世界に誇る技術力を活かして海外諸国の成長や生活の豊かさに貢献しつつ、特にアジア地域における内需拡大を総合的かつ集中的に推進する「アジア版ニュ ーディール」に取り組みます。また、わが国にとって必要な資源などを確保するため、首脳・閣僚クラスによるトップ外交やODAの活用などを戦略的に推進します。
- 省エネ・新エネ技術や原子力等の環境技術 の高度化などにつき、アジア等への海外展開 を支援し世界の環境改善に積極的に貢献するとともに、わが国の環境ビジネスの発展をめざします。
- エネルギー安定供給と地球温暖化対策の推進のため、原子力発電の安全性を確保しつつ稼働率を上げるなど適正に推進します。
- 原子力発電所の安全審査を厳格に行うとともに、新耐震指針を踏まえた耐震バックチックの厳格運用など安全性を向上させるための新検査制度を導入し、地域住民の理解と安全を確保します。
- 原子力発電の一層の安全性の強化を図るた め、事故情報の迅速な開示など事業者の体質 改善を一層促進します。
- 世界でトップレベルにあるわが国の原子力 安全技術を展開することを通じて、原子力の 平和利用や安全ネットワークの構築にリーダ ーシップを発揮します。
みんなの党 アジェンタ 2010 成長戦略
発電に関しては、世界の今後の追加設備需要は石炭・ガスが最大。日本には、重要な技術資源として高効率火力発電(超々臨界発電、石炭ガス化複合発電など)がある。再生可能エネルギーの利用促進に加えて、これらの技術開発および国際展開の支援が重要。加えて、「グ リーン・グロース」の構成要素としては、原子力やCCS(二酸化炭素回収・貯留)の技術も大変重要。
共産党 2010年参議院選挙政策
エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。日本は、京都議定書にもとづいて、その第一約束期間内(2008〜12年)に二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減する義務があります。しかし日本の目標達成は危機的状況にあります。政府は原発の新増設を“頼みの綱”としていますが、原発は安全性に問題があり、原発に依存するのではなく自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです
プルトニウム利用をやめ、原発からの段階的な撤退をすすめます
政府と電力会社が温暖化対策を口実に新増設を図っている原発は、十分な安全の保証がなく技術的に未確立です。磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、冷却用海水の温度データのねつ造、志賀・福島の各原発の臨界事故隠しなどが次々と発覚しました。経済産業省の指示で電力会社が行った調査の結果報告(07年3月)によれば、問題事例が全体で1万件をこえ、うち原子力関係が455件もあるという驚くべき数に上りました。その事例で明らかになった、基準や手続を無視したルール違反の横行とずさんな検査体制や経営・管理の実態は深刻です。今年4月末にも、中国電力の島根原発1、2号機の点検漏れが506件にのぼり、点検計画と実績に食い違いがみられる機器が1665件もあるなど、ずさんな実態がまた明るみに出ました。
にもかかわらず民主党政権は今年5月、1995年のナトリウム漏れ・火災事故以来、14年ぶりに高速増殖炉「もんじゅ」の運転を再開しました。運転再開して早々、運転員がいわば原子炉の「ブレーキ」である制御棒の完全な挿入の仕方をしらなかったことや、燃料の破損を検出するために、原子炉内のガスに含まれる放射能を測定する装置3台のうち2台が故障するなど、トラブル続きです。民主党政権は、2050年を実用化の時期としていますが、欧米では安全性と採算性が見込めないために、すでに高速増殖炉の開発からは撤退しています。これまでもすでに7900億円(民間資金も入れれば9300億円)もの予算が投じられて、今後も毎年300〜400億円規模の予算を投じる計画です。見通しがないまま、巨額の予算をつぎ込む核燃料サイクル計画は、きっぱりやめるべきです。また、民主党政権は、MOX燃料(プルトニウムにウランを混ぜたもの)を普通の原発(軽水炉)で燃やすプルサーマル計画も進めています。プルサーマルは、2015年度までに16〜18基の原発で実施する計画です。現在の原発は、もともとMOX燃料を想定せずに建設されました。ブレーキに当たる燃料棒の利きが悪くなるなど危険性が増します。危険なプルサーマル計画はすみやかに中止すべきです。
国民の安全に責任を持つ規制行政を確立するうえで、原発を規制・監督する原子力安全・保安院を、促進官庁である経済産業省から独立させることは、国際的なルールに照らしても最低限やるべきことです。
2007年の新潟県中越沖地震を契機に、柏崎刈羽原発や高速増殖原型炉「もんじゅ」などの地下に活断層があることが明らかとなりました。六ケ所村の核燃料サイクル施設の地下にも活断層があると指摘されています。すべての原発について活断層調査を実施し、また耐震基準の見直しを行って、原発の耐震性の総点検を実施します。東海地震の想定震源域の真上には浜岡原発があります。このような政府・電力会社による原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません。今の原発では他にも、放射性廃棄物の処理と万年単位の管理の問題、莫大な費用がかかる問題など、多くの問題が解決されないままです。
こうした問題を抱えた原発からは、計画的に撤退すべきです。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画や「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し、計画は中止すべきです。原発の総点検をおこない、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。
政府は、自治体にプルサーマル実施の受け入れや、高レベル放射性廃棄物の最終処分場への応募をうながし、受け入れれば手厚い補助金を出すとしてきましたが、補助金と引き換えに住民に危険を押しつけるようなやり方はやめるべきです。
民主党政権は、「原子力立国」をかかげて原発の輸出や技術協力を目指していますが、国内外で、安全を軽視した原発の新増設をすすめることはやめるべきです。
社民党 Manifest 2010 参院選選挙公約
連立の中で全力投球
... 原発や安保関係では、民主党の暴走を抑えてきました。
○ CTBT(包括的核実験禁止条約)発効やカットオフ条約の具体化を目標に、関係国への働きかけを強め、NPT体制の強化をめざします。NPTの厳格運用をはかり、NPT非加盟国への原子力協力は一切行いません。
○ 核拡散につながるプルトニウム利用政策を転換し、国際的にも批判が強い六ヶ所村の核燃料再処理施設の運用を凍結します。
○ 脱原発をめざし、核燃料サイクル計画を凍結し、 使用済燃料の再処理、プルサーマル計画を中止しま す。原子力発電からは段階的に撤退します(ドイツ のロードマップでは202年までに原子力から段階的 に撤退)。特に耐震性に問題のある原子炉は速やかに 廃炉にします。 ○原子力発電については、地震などによる事故、放 射能による災害リスクなど恒常的な問題を抱え、核 廃棄物を排出し、処理方法も未確定であり、環境面か ら望ましいものではありません。また、大規模電源の 出力調整のためにCO2を多く排出する火力発電所の 利用とが一体となっていることや、原子力の開発・ 運転には長期間、膨大な資金を投入せざるを得ませ ん。さらに、中央集権的な原子力発電が増えれば、 地域循環型で持続可能な再生可能エネルギーの利用 促進が阻まれることにもなり、生物多様性とも矛盾 します。運転中にCO2を出さない点だけを強調し て、膨大なコストや放射能廃棄物のリスクを軽視 し、国民の理解や支持も不十分なまま、温暖化対策 として推進するのは危険です。
○ 環境保全に役立つ自然エネルギーの促進、省エネ は課税を軽減し、歳出を増やします。石油や原発 に偏ったエネルギー対策特会(総額8900億円)、電 源開発促進勘定(3700億円)を自然エネルギーの 促進に活用します。
沖縄社会大衆党 2010年度、党活動の基調と重点目標
沖縄の自然と気象条件を最大に活用した太陽、風力、波力などの自然エネルギーの研究、開発を促進し、その活用と普及を積極的に図り、地球温暖化対策を推進するための「自然エネルギー立県」を目指す。また、バイオエネルギーの研究、開発についても推進するが、アフリカなど開発途上国において穀物価格の高騰、食糧危機をまねいており、慎重に対応する。
国民新党 2010政策集
- 外国人参政権反対 外国人参政権は仮に地方選挙といえども、 安全保障政策や原子力発電等に代表され るエネルギー政策に大きく影響を与え、我が 国の「主権」と密接に関係する問題です。ま た参政権が付与されたが為に無用の民族間 対立が惹起される可能性も否定出来ません。 そして「公務員を選定し、及びこれを罷免する 事は国民固有の権利である」と定めた我が 国の憲法にも抵触する問題です。私たちは 国民の安全と国家の主権を維持してゆく為、 外国人参政権の付与には断固反対します。
たちあがれ日本 政策宣言2010
高速鉄道、原発、スマートグリッド(次世代配送電システム)など、グリーン分野でのインフラ輸出を強化します。
日本創新党 日本創新党のマニフェスト
日本の世界最先端技術を活かした環境貢献型システム・製品(太陽光発電など自然エネルギー・新エネルギー技術、原子力発電、高効率石炭火力発電、高効率高炉、各種の生産システム、次世代自動車、省エネ家電等)の輸出支援を行なう。
新党改革 新党改革の約束2010
※ 言及無し
新党大地 第21回参議院通常選挙にあたっての新党大地の考え
※ 言及無し
新社会党
※ 2010年参院選は社民党候補者の支援を行う。独自のまとまった政策集は無い模様
政党そうぞう
※ 2010年参院選向けの政策集はWebでは見つけられなかった。
幸福実現党 2010年参院選主要政策(マニフェスト)
※ 「新エネルギー開発」などの記述があるが、原子力などについての具体的な言及は無し。