dragon image みちのぶのねぐら

単独講和と旧安保条約締結

Update: 2010-04-25

半世紀以上続く日米同盟は、その出発のときから問題を抱えていました。日本を冷戦に巻き込み、軍事拠点としての沖縄の位置を確定的なものとした経緯を以下にまとめます。サンフランシスコ平和条約と旧安保条約が同時に結ばれたというのがポイントです。

以下、個別にURLを明示したものと「日米安保はどう変わるか」(1996年 須田博) 以外に、Wikipediaの現状の内容を参照しています。Wikipediaについては信頼性に若干の不安があるのですが、ま、だいじょうぶだろ(^_^;)

1. 東アジアの情勢

1949年に中華人民共和国が成立しました。それにより米国が東アジアの足がかりとしようとしていた中華民国の国民党政権は、台湾に追い出されてしまいます。

1950年には朝鮮戦争が勃発します。日本はその後方として重要な役割を果たします。戦地への物資の供給のための朝鮮特需が発生するだけでなく、特別掃海隊の派遣なども行い若干の死傷者を出しています。また、米軍は日本の本土や沖縄の基地から直接現地へ出撃しています。

2. 単独講和

サンフランシスコ講和会議に先立ち、日本国内では全面講和を求める運動がおこりました。国連の信託統治に置かれるという方針が示されていた沖縄では、有権者の72%の祖国復帰署名が集められました。それを押し切り、時の政権は単独講和を進めます。1951年9月8日、サンフランシスコ平和条約に49カ国が署名します。その講和会議に中国や韓国は呼ばれず、インド、ビルマ・ユーゴスラビアは不参加、ソ連・ポーランド・チェコスロバキアは講和会議に参加したものの署名を拒否しました。

講和会議に参加した日本の全権委員は次の6名です。社会党は参加を要請されたものの委員を出しませんでした。

以下、条文は http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/indices/JPUS/index-sf.html を参照しました。

この条約で、沖縄については次のように記しています。

第三条

日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥> 島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるま> で、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

集団的自衛権と日本国内の外国軍の駐留については次のように記しています。この記述が、占領軍である米軍が安保条約にもとづく在日米軍に変身する根拠となります。そのことは旧安保条約の前文にも記されています。

第五条

(c) 連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。

第六条

(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果> としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん{前2文字強調}又は駐留を妨げるものではない。

3. 旧安保条約

この条約は事前に公表されないまま、講和会議の場でいきなり吉田首席全権が1人で署名してしまったものです。吉田茂首相以外の全権委員は内容を知らなかったのではないかと言われています。

内容のポイントは次の2点で、1960年の新安保条約にも引き継がれます。

以下、 http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T2J.html より、あまり長くないので条約の全文を引用します。

日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約

1951年9月8日作成,1952年4月28日発効

日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。

無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危険がある。よつて、日本国は平和条約が日本国とアメリカ合衆国の間に効力を生ずるのと同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。

平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。

これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。

アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威とな> り又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。

よつて、両国は、次のとおり協定した。

第一条

平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう{前3文字強調}を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。

第二条

第一条に掲げる権利が行使される間は、日本国は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。

第三条

アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。

第四条

この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。

第五条

この条約は、日本国及びアメリカ合衆国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が両国によつてワシントンで交換された時に効力を生ずる。

以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。

千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で、日本語及び英語により、本書二通を作成した。

日本国のために
吉田茂

アメリカ合衆国のために
ディーン・アチソン
ジョージ・フォスター・ダレス
アレキサンダー・ワイリー
スタイルス・ブリッジス