dragon image みちのぶのねぐら

みんなの党の政策

Update: 2010-04-04

支持もしてないし、これまでほとんど無視していたみんなの党の政策について、いまさらながら調べてみました。みんなの党のWebサイトにはあまり資料が上がっていないので、 マニフェスト2009 (PDF) だけを基に考察してみます。

結論をひとことで書くと、ちまたで言われるとおり小泉政権もどきです。小さな政府を目指すことについてはよりエキセントリックかもしれません。

1. 公務員削減

マニフェストの見出しでは国家公務員の削減となっていますが、地方公務員にも影響のある内容です。現在33万人の国家公務員を10万人減らし、その他の追加の施策とあわせて人件費を3割減とするそうです。公務員への労働基本権の付与とのバーターとなる民間並みのリストラは、地方公務員にもそのまま適用されることになるのでしょう。

また、地方自治に関する項で、基礎自治体(市区町村?もしくはそれをさらに統合したもの?)の業務を民間に移すとしています。民間活力の活用の類のことは、これ以外に、ハローワーク、年金積立金の運用などを挙げています。

しかしながら財政面の効果は限定的です。さらに、行政遂行能力については、福祉・教育などで壊滅的な影響を与えると思われます。

資料:行政改革推進本部「公務員の種類と数」 http://www.gyoukaku.go.jp/senmon/dai1/sankou6.pdf

資料によると、H18年度の公務員の定数約398万7千人のうち、国家公務員は約94万5千人、そのうち一般職の非現業国家公務員が約30万1千人です。みんなの党のマニフェスト2009にある「現在33万人の国家公務員」というのは、非現業国家公務員など行政機関に所属する公務員の数だと思われます。これ以外に、防衛庁(当時)職員約27万4千人、日本郵政公社職員約26万2千人(現在は公務員ではなくなった)、特定独立行政法人職員約6万9千人などがあります。

従って、行政機関の職員の人件費を 3割減らすということであれば、国家公務員全体に対する割合でH18をベースとした場合 1割程度、現状をベースとしても15%にはならないということになります。

そもそも、そんな数字より、給与の金額から計算した方が早いことに気がつきました。 10万人 × 6,627千円 ( H18 ) として 6,627億円にしかなりません。

ぜんぜんだめじゃねーか

さらに、同じ資料から、治安関係約6.4万人、国税5.5万人、防衛2.3万人で、これらは地方には移せないと思われます。すると、それ以外の分野は 6割程度減らして半分以下にする必要があります。いくつかの省庁は消えて無くなりそうな勢いです。

日本の公務員が多いのかどうか、他国との比較は次のようになります。 公務員数の国際比較に関する調査 報告書 平成17年11月 株式会社 野村総合研究所 p.3 より、人口千人あたり

イギリス 98人(フルタイム換算職員数 78人)
フランス 96人
アメリカ 74人
ドイツ  70人
日本   42人(公益法人職員、地方自治体の非常勤・臨時職員等を含む)

現状のこの人数の公務員を支えられないとしたら日本の生産力ってどうなのよ?

あと、この政策で直接的には家計の収入の平均は下がってしまうのでしょうね。。。

2. 郵政民営化

天下り、埋蔵金などの項はすっとばして、今も引き続き世間の話題になっている郵政民営化についてです。

民営化の基本骨格は維持し、郵貯・簡保資産を民間市場に流すことをすすめるそうです。今はそれがなくて国債を買っています、という理解であってますね?って誰に聞いてるんだ、自分。あ、いや、米国債も買ったんだっけ。なんでこの辺の用語でぐぐると 2ch ばっかひっかかるんだろうね。それはいいとして、引用元の日経の記事は既に存在しないようなのですが「190兆円に上る資金運用の8割を日本国債が占めて」いるところで「2009年10~12月期に」「米国債を約3千億円購入していた」とのことです。運用できる資金全体の比率としてはまだまだ少ない金額ですから、とりあえず実績ができたというレベルの話でしょう。

さて、国債も大量に発行してしまったし、もしかすると米国からも国債買えと言ってきてるかもしれないし、この政策は実現できるのか?と他人事ながら心配してみるのですが、まあ、公務員削減で小さな政府を実現して国家財政をどうにかした後の話だと理解します。農林中金のように自分でしっかり運用できるようになるのは時間(年単位)がかかるんじゃないかな。この間の経営陣の人事のごたごたなど見ていると、よからぬことを考えている人や企業に利用されたりしないかとても心配です。

3. 議員削減

国家予算に占める国会議員の人件費はたいしたことないし、みんなの党に限らずこの手の主張の主要な意図は小党排除だと私は思っているので、無視。一院制については後述します。

4. 企業・団体献金の禁止と政党法

企業・団体献金の禁止自体はいいのですが、「政党法」って久しぶりに見ました。他の政党の政策にはあったかな?「候補者選定における公募や予備選挙等を義務づけ」のうち公募は噴飯ものです。その政党がやりたければやればいいのですが、近代的な政党として機能している場合に必要でないものを義務づけるとは、結社の自由もへったくれもない考え方です。

政党助成金は現状のまま維持する前提の政策となっています。小さな政府のためにこれを削ったりはしないようです。

5. 政治主導

「与党と内閣の要職を兼務させ、内閣(国家)の意思決定過程を一元化」は小沢一郎氏などが従来から主張していることと同じ方向のもののようです。議員削減についての項で一院制への移行を主張していますが、こちらの政治主導とも整合性のある政策です。参院で野党が多数を占めるねじれ国会現象が発生すると、意志決定過程の一元化には大きな支障を生じます。

小沢流の意志決定の一元化は、国会を、与党すなわち政府の方針に沿った法律を作る場に矮小化するものだと私は考えています。この政策で、三権分立を有効に機能させることについては会計検査の機能を国会の下に置くことを挙げているのですが、これもうまくいくように思えません。議院内閣制を伴わない完全な大統領制を採るアメリカとは事情が違います。

おなじく政党法の項で「政党助成金等の上場企業並みの情報公開」と書いていますが、これは、「政治資金の出入りを一円に至るまで全面的に公開し」(小沢一郎「日本改造計画」)等に比べると緩いですね。

6. 経済成長

「地域密着型の産業の育成」「中小企業の活性化」「緑の成長」などは他の政党にもありそうな政策です。それらに比べて、私が奇妙に思ったのは、流通・サービスの事業のアジアへの進出です。「モノ」については価格競争で勝てないという前提で書いているのだろうと私は勝手に推測しています。

それはいいのですが、しかし、列挙しているもののなかで現時点で目に見える実績があるのはコンビニくらいではないでしょうか。物流も、シンガポールのような小国に負けそうです。そして、教育や福祉についてはいったいどんな展望があるのか、私には理解できません。そもそも、教育や福祉はそれぞれの国の行政が仕切っています。日本の企業の進出はもちろん、民間に任せること自体に抵抗が生じます。相手の国が小泉内閣のような政府であれば別ですが。そこで、米国が日本にいろいろ市場開放を求めたようなことが、日本とアジア各国の間でできるとは思えないし、やるべきではありません。

逆に、アジアから日本に来てもらう対象として大学を挙げていますが、無理です。留学生が日本の有名大学の貧相な様に驚く現状を変えない限り、日本語を覚えて日本で就職するためという以上の魅力はなかなか発揮できません。後の項で教育について触れられていますが、高等教育については奨学金の拡充くらいしか挙げられていません。

7. 正規・非正規社員間の流動性を確保

労働政策でよくわからないのが「正規・非正規社員間の流動性を確保」という記述です。非正規労働者についての他の項を見ると、待遇改善のための積極策を採るようです。それによって、その人が働きたい形態を自由に選択できるようにする、と読むことができます。素直に読めば。

しかしながら、究極の流動化した労働市場というのは、全員が非正規労働者になった状態とあまりかわりません。製造業の派遣についても現状追認するつもりだとしか思えない記述です。派遣や有期雇用については財界からの要求を容れる形ですすめる、それをできるだけ抵抗なく国民に受け入れてもらうための条件整備をすすめるつもりなのではないかとの疑念を持ちます。

ハローワークを民間開放するというのは、要するに、行政は何もしないというのに等しいことです。

8. 子育て手当と所得配分の強化

これらは、国家公務員の大幅削減によるきわめて小さな政府の実現を前提にしたウルトラCの政策と思われます。ミニマムインカムは一般的にはベーシックインカム(BIと略すことがある)と呼ばれているものですね。

9. 道州制

「自主立法権、課税自主権、住民参加等を充実し地方政府を確立」ということですので、米国の州のようなものを想定しているのでしょう。国家機構の縮小のためには避けて通れないようです。「基礎自治体」というのが市区町村、もしくはそれをさらに統合したものだとすると、都道府県は解体することになります(道州制なら当たり前か)。それによりもともと都道府県が担っていた行政機能を集約して、権限の強化と効率を両立させると言うことかな?道州制の主張ってそういうものですよね?一般的に。

これにより、米国の州の平均よりはるかに大きな地方組織ができます。立法や課税はできるでしょうけど、小さな国レベルのサイズになって住民参加って?もひとつ意味がわかりません。

10. 外交

いろいろすっとばして、最後に外交についてです。

「相互信頼に基づく日米安保体制を基盤(米軍再編への協力等を含む)。」ですが、日本語の文法としておかしいので、正確に意味を読み取ることができません。

次の項で、対等な同盟関係を築くためのことを述べています。思いやり予算は見直すそうです。私の意見としては廃止して欲しいところです。そもそも筋の通らないおかしなものだから「思いやり予算」という名称を頂戴している代物のはずです。それから、「米国に言うべき事は言い、求めるべきことは要求。」という記述はいくらなんでも手抜きでしょう。後の項で出てくる「米国追従の(自衛戦争への)自衛隊派遣は行わない。」あたりがその具体的な内容に相当すると思われます。

さらにその次の「に対する 備えには万全。」っていう文章の終わり方もなんだかなあ。

「唯一の被爆国として「核廃絶」の先頭に立」つそうです。で、核密約とかは?この政策を出した頃には世間でも話題になってなかったかな?

以上、後の項ほどおざなりな記述になっているようなので、私の文章もおざなりなまま終わります。